▶ 移転価格制度に関する新しい規定

移転価格制度に関する新しい規定


 2017年4月に財務省は、Circular41/2071/TT-BTCを交付しました。これは、2017年2月に公布したDecree20の内容を補完するものです。
いずれも2017年5月より施行となります。
 改定内容については、以下になります。
 
 1.ベンチマーク分析等の比較可能性分析
 2.移転価格算定方法
 3.順守するべき手続(国別報告書等)
 4.移転価格税制規定の免除

各項目について、以下内容を確認します。

(1.ベンチマーク分析等の比較可能性分析)
 ・実質主義の概念の重要性を強調
 ・次の要素をすべて考慮に入れることを規定
   1)提供するもしくは受領する財務または役務の特徴
   2)契約上の条件
   3)機能分析
   4)経済情勢
 ・ロケーションセービング(安い労働力などの地理的要件による超過収益力)や、ローカルマーケットプレミアム(特定市場の優位性)の要素も考慮。
 ・定性的、定量的基準と、運転資本調整などに関する説明。
 ・無形資産に関する開発、改良、維持、保護、使用のプロセスを重視する指針の提供
 ・ベンチマーク分析手続の詳細な説明

(2.移転価格算定方法)
 2-1.独立企業間価格の範囲と調整に関する指針
  ・全範囲(Full range)の適用 
   以下の場合は、全範囲が独立企業間価格となる。

① 同等の信頼性および比較可能性がある独立した比較対象取引もしくは企業を特定できるも
しくは差異を特定できない時

② 差異は存在するが、当該差異のすべてを解消するのに十分な情報が入手可能な時

  ・四分位範囲(inter-quartile range)の適用

 独立した比較対象取引、企業と納税者の間に重要な差異が存在するが、当該重要な差異の大
部分を解消する情報を入手できるとき。

  ・移転価格調整

 上記の範囲に収まる場合は、移転価格調整を行う義務はない。しかし、その範囲外にある場合は、全
範囲または四分位範囲の中で最も適切な値を算定し、適切な調整を行う必要があります。
 この調整は、税収が減少しない場合に限り、移転価格調整を行う必要がある。

 ・四分位範囲の中央値の適用

 税務当局がみなし調整を行う際は、四分位範囲の中央値を使用する。

(3.移転算定方法)
 Circular41には、以下の点の記載があります。
  ・再販売価格基準法、原価基準法、利益比準法の適用シナリオ
  ・利益比準法においては、営業利益の計算から財務活動による収益と費用は控除する。
  ・利益水準指標の指標は、納税者のビジネスの性質や実際の業績を考慮する。
  ・納税額が過少であった場合は、加算税、罰金、延滞税の対象となる。

(4.順守するべき手続)
1.開示文書の作成提出

以下の文書を法人税の確定申告書とともに提出をしなければなりません。
 ・フォーム01 関連当事者及びその取引に関する情報(以前のフォーム03からの変更)
 ・フォーム02 ローカルファイルに必要な情報及びチェックリスト
 ・フォーム03 マスターファイルに必要な情報及びチェックリスト
 ・フォーム04 国別報告書(最終親会社がベトナムにあり、かつ課税年度の全世界所得が18兆
ベトナムドン以上(約900億円)以上の場合)

2.移転価格文書の作成と保管

以下の文書を作成保管する義務があります。
・ローカルファイル
・マスターファイル
・国別報告書の写し(最終親会社が所在する地域の法令に従い作成した場合)

法令によると、法人税の申告書を提出する前にこれら文書を作成する必要がある。
税務調査の際には、税務当局からの依頼ばあれば15営業日以内にこれら文書を提出しなければ
ならない。

   国別報告書に関する取扱


国別報告書に関する取扱いは以下の通りです。
・ 納税者が、多国籍グループに属する子会社である時、かつ、連結されている場合は提出義務。
・確定申告書とともに提出出来ない場合は、前年度に作成された国別報告書の写し及び弁明書を
提出。
・当年度または前年度の国別報告書を提出出来ない場合は、弁明書を提出


(移転価格税制の免除に関する指針)
  Decree20については、移転価格文書の作成義務の免除規定があります。(参照)
  Circular41は、納税者が複数の単純機能を手掛ける場合の適用除外規定の補足しています。

・納税者がセグメントごとの収益と費用の把握が可能な場合
  ⇒セグメントごとの別々の利益率を使用
・納税者がセグメントごとの収益を把握可能であるが、費用が把握出来ない場合
  ⇒費用を収益に基づいて按分計算を行い利益率を使用
・納税者がセグメントごとの収益と費用を把握出来ない場合
  ⇒適用除外規定にある最も高い利益率を当該事業セグメントに適用


以上の規定の通り、新しい移転価格の文書化に関する規定が導入されています。
特にマスターファイルについては、日本の法令においては、作成が免除されている会社であっても、ベトナムにおいては作成保管が必要とされるため、今後の税務調査に備えて準備を行う必要があります。

 

2017年11月21日