ベトナム市場に現地法人を拠点として参入する場合の持分の取得形態は、様々な方法があります。
その中で、ベトナム企業との合弁をする場合は、合弁先の会社に対して、パートナー企業として信頼に足る企業かどうか調査を実施するデューデリジェンス(DD)を行うことがあります。
一方、持ち分(株式等)を取得する場合は、その取得対象企業に対してDDを実施することがあります。
DDについては、コマーシャルDD,財務DD,税務DD,法務DD、人事DD、コンプライアンスDD等がありますが、ベトナム企業を買収する際には、財務DD、税務DD、法務DDを実施するのが一般的です。
財務DDや税務DDにおいては、独立した第三者として会計事務所や弁護士事務所に依頼をすることが一般的です。
各DDについては、事前準備で1週間程度、現場の実地調査で一週間程度、報告書のドラフト作成で1週間程度、最終報告で1週間程度になり、1か月程度かかるのが一般的です。
しかしながら、DD対象企業の協力状況にもよりますので、留意が必要です。
買収企業、被買収企業の経営者同士が同意の上でも、被買収企業の経営陣が少しでも高く売却する為に、資料の提出を拒むことや、遅延することが頻繁にあります。
また、被買収企業の経営陣が好意的であっても、現場担当者レベルでは、資料の提出を拒むという状況が発生することがありますので、留意が必要です。
その場合は、事前にそれぞれの企業の経営陣、現場担当者、DD担当者などの意思を統一させる為にミーティングを実施し、コミュニケーションを図るなどの方法が必要です。
買収企業の担当者がDD実施の期間にベトナムに訪問出来ない場合は、現場において臨機応変に対応し、進捗管理や資料管理を行うことが出来る人物に依頼するなどの対応が必要です。
DDの担当者は、資料の提出について被買収企業に対して強く依頼することが出来ない為、買収企業側の人物がコントロールする必要があります。
DD実施時において、資料の提出拒否や遅延がある場合には留意が必要です。程度にもよりますが、何かしら隠したい情報がある為に拒否や遅延がありますので、そのような場合は、買収後においても事業の運営に困難な状況が生じる可能性があります。
実際に、日本企業が買収した事例においても、DDを実施した際に資料の提出が十分でなかった論点について問題が噴出し、買収額を超える追加の出資や人的なサポートが必要になった事例もあります。
ベトナム市場は魅力的な市場ではあり、ベトナム企業は、多数の日系企業を相手に買収の話を持ちかけていますので、提案は一見魅力的で一瞬のチャンスと感じますが、慎重な検討が必要です。